Give & Takeの概念
10年以上前に日本で紹介された『Give & Take』という本があります。お読みにかった方は多いはずですが、実は、この本の中で紹介されているGiverを正しく理解されている方は、意外と少ない印象があります。
ペンシルベニア大学ウォートン校の教授であるアダム・グラントは、人間関係における「与えること」と「受け取ること」のバランスについての研究を行いました。
『Give & Take』の中では、この研究の結果が紹介されています。 アダム・グラントは、「与えること」と「受け取ること」の傾向の違いによって、人を以下の三つに分類しました。
• Taker:他人からできるだけ多くを得ようとする人。
• Matcher:与えた分だけ、自分も恩恵を得ようとする人。
• Giver:惜しみなく他人に与えようと
アダム・グラントの研究では、Giverが最も高いパフォーマンスを発揮することが示されています。例えば、営業職では長期的に高い業績を上げ、エンジニアではプロジェクトに高い貢献をし、医療従事者では患者から信頼を得やすいとされています。
『Give & Take』を読んだ人の中には、「Giverが最も高いパフォーマンスを上げる」部分だけを記憶している人が意外と多く、「とにかくGiveせよ」とまで言う方もいらっしゃいます。
2種類のGiver
しかし、Giverにはさらに2種類あるとされているのです。それは次の2つです。
1. 自己己犠牲的なGiver(Self-Sacrificing Givers):
他人を助けるために全力を尽くし、自分の時間やリソースを惜しみなく提供しますが、自分の健康や幸福を犠牲にしがちです。短期的には感謝されますが、長期的には自分や組織の目標達成を阻害しやすく、他人から利用されやすい傾向があるGiverです。
2. 自己犠牲をしないGiver(Other-Focused Givers):
他人を助けながらも自分のリソースを無駄にせず、持続的な支援を行います。自分の健康や幸福を保ちつつ、他者貢献の方法を見つけるため、持続可能な支援ができ、長期にわたり信頼と感謝を得やすく、組織目標も達成しやすい傾向があります
そして、「パフォーマンスが高いGiver」とは「自己犠牲的なGiver」ではなく、「自己犠牲をしないGiver」のことだとされているのです。 もし組織(および個人)のパフォーマンスを持続的に高めようとするのであれば、自己犠牲的なGiverではなく、自己犠牲をしないGiverでなくてはなりません。
自己犠牲をしないGiverを組織に増やす
リーダーは、組織内で「短期的な貢献を重視した自己犠牲」を善としないよう心掛けることが大切です。どれだけ組織への貢献、社会への貢献、顧客への貢献が大切だとしても、社員の「働きがい」や「生きがい」を無視した貢献、すなわち自己犠牲的なGiverの存在を「よし」としてしまっては、組織のパフォーマンスを持続的に成長させることは難しくなるでしょう。そのためには、どんなに素晴らしい貢献であっても、社員のその貢献が「自己犠牲的」であった場合は、それを評価するような発言をしてはなりません。自己犠牲的なGiverを評価する仕組みが評価・昇格制度の中に根付いていないかどうかも確認する必要があります。
「持続的な成長」はあらゆるリーダーにとって最も重要なテーマの1つでしょう。自己犠牲をしないで他者に貢献できる方法を考えることは、リーダーの重要な役割なのです。