「働きやすさ」と「働きがい」を実現するリーダーとは HINT

「働きやすさ」と「働きがい」を実現するリーダーとは

「働きやすさ」と「働きがい」を実現するリーダーとは

昨今、「プラチナ企業」という言葉を目にする機会が増えているのではないでしょうか。
プラチナ企業とは、「働きやすさ」と「働きがい」の両方が高い企業を指し、働きやすさは高いが働きがいが低い「ホワイト企業」や、その逆である「モーレツ企業」と区別されます。単に働きやすさを追求するだけでなく、持続可能な成長が見込める「働きがい」がある企業なのか。
そのような組織づくりが求められる現代の経営者にとって、非常に重要なテーマです。

「働きやすさ」と「働きがい」を目指すリーダーシップ – PM理論とは

それでは、この「働きやすさ」と「働きがい」の両方を実現するために求められるリーダーシップとは、どのようなものでしょうか。

リーダーシップ理論の一つとして有名なPM理論では、プラチナ企業に共通する考え方が長年にわたり重視されてきました。PM理論は、リーダーの機能をP機能「目標達成機能」とM機能「集団維持機能」に分類し、それぞれのバランスを取ることで効果的なリーダーシップを目指す理論です。

P(Performance function)機能:成果を出すために発揮されるリーダーシップ。目標の設定、指示、課題解決など、業績に直結する機能。
M(Maintenance function)機能:チームを維持・強化するために発揮されるリーダーシップ。チーム内の関係性を良好にし、チームワークを高める機能

図1の通り、PとMの強弱によってリーダーシップ像を4つに分類することが特徴です。

図1:PM理論によるリーダーシップの4分類

PM理論では、P機能もM機能も高いPM型のリーダーが良いリーダーと定義されており、このPM型のリーダーがまさに「働きがい」と「働きやすさ」を高めてチームを引っ張っていけるような、プラチナ企業を目指す組織に求められるリーダー像です。

P機能とM機能、どちらを先に伸ばしていくのか

PM型のリーダーが望ましい一方で、実際の組織運営においては、十分に準備ができてから役職に就くのではなく、役職に就いてからOJTでリーダーとして成長していくケースが多いです。そのため、部下の役職を決める経営者の立場としても次のような悩みを持つことが多いのではないでしょうか。

•「まだPM型のリーダーには達していないが管理職に抜擢するか判断しなければ」
•「P機能にだけ秀でたリーダーと、M機能にだけ秀でたリーダーがいる。どちらをリーダーに任命すべきか」

私がこれまで20年以上エグゼクティブ・コーチングを続けて来た中で、そのような悩みを持つクライアントは非常に多くいらっしゃいました。皆様と関わる中で私が得た現時点での結論は、「M機能を先に習得し、その後P機能を上げていく」ことです。

なぜM機能を先に伸ばすべきなの

人間は感情の生き物なので、一度相手に持ったイメージは簡単には変わりません。
例えば図2のように、P機能に特化したリーダーが上に立つと「このリーダーはパフォーマンスを部下に求める人だ」というイメージがメンバーに定着します。そしてそのリーダーと関わるたびに、常に営業数字を意識した会話が行われるようになれば、メンバーは遅かれ早かれ疲弊してしまいます。

「パフォーマンスのみを重視するチーム」として動き出した後に、そのリーダーが「これからはチームワークも重視していこう」と方針を打ち出しても、メンバーのイメージは簡単には変わらず、信頼関係の構築が困難になります。

図2:P機能に特化したリーダーのアプローチ

一方で、図3のように先にM機能が充実したリーダーが関係性を築いた上で「これからは目標達成に向けてもみんなで力を入れていこう」とコミュニケーションを取ると、関係性が保たれたまま、P機能の強化に向けてチーム全体で成長していける可能性が高くなります。

図3:M機能が充実したリーダーのアプローチ

チームに浸透させたい「問い」とは何か

「パフォーマンス重視」のイメージが定着しているリーダーがチームワークの向上に舵を切ることが不可能というわけではありません。ここで重要なのは「どんな情報を発信するか」ではなく「チームにどんな問いを浸透させるか」という点です。

例えばリーダーが部下に会うたびに「売上はどうなった?」とパフォーマンスを気にした質問ばかりしていると、メンバーは「売上について聞かれた時の言い訳を考えなければ」と意識がそちらに向いてしまいます。

それに対して、「あと何があればうちのチームはもっとイキイキと働けるだろうか」「あなたはチームにどんな貢献ができると思うか」など、「チームについて考える問い」を浸透させると、メンバーの意識が徐々に「チーム」へ向いていきます。 まずは自分やリーダーがPM理論のどの位置にいるかを把握し、望ましい方向へ進むための問いをチームに浸透させていくことが、プラチナ企業への第一歩となるでしょう。