「コーチングを受けているけど、なんだか成果が感じられない。コーチングってこんなものなのかな」
これまでに、こんな不安や戸惑いをおぼえたことはないでしょうか。
私も多くの経営者に会ってきましたが、成果が感じられずに何度もコーチを変えている方は珍しくありません。
コーチングの成果とは何なのか。
そして、コーチングが「うまくいっている」とは、どういうことなのか。
ある時、シンクワイアの経験豊富なコーチたちと共に、”うまくいったコーチング“ “うまくいかなかったコーチング“を振り返る機会がありました。
そこで見えてきたのは、目標設定の大切さです。
目標には「成果目標」と「成長目標」の2種類がある
「社外取締役と対立しがちだ」、「次期社長候補者が会社を辞めてしまった」など、クライアントがコーチングセッションで取り上げる内容は様々です。
それなら「社外取締役と建設的な対話が行われるようになる」ことや、「新たな次期社長候補を見つける」ことが実現できればコーチングの効果をクライアントが実感するのかというと、どうやらこれだけではなさそうです。 これらは、達成されたかどうかを外的な要素によって判断することができる「成果目標」ですが、コーチングの成功のために、もうひとつ欠かすことのできない目標があります。それは、目的達成のためにクライアント自身が内的にどう成長し、変化するのかという「成長目標」です。
コーチングで設定する4つの目標
たとえば、これまで売上数字ばかりを考えていた経営者が、専任のエグゼクティブ・コーチから「御社のお客様は何に最も満足しているのですか?」、「御社はお客様から何を最も評価されたいのですか?」などと聞かれたとします。
するとその経営者に「お客様の満足」という新たな視点が生まれる可能性があります。「お客様は何に満足しているのだろうか?」という質問が経営者自身の中に「内在化」されることで、「お客様の満足」に対する意識が高まるためです。
「お客様の満足」に対する意識が高まった経営者は、他の役員にも「うちのお客様は何に満足しているのだろうか?」と尋ねるでしょう。その役員はさらに、自分の部下である部長に「お客様が最も満足しているものは何だろうか?」と尋ねる機会が増えるでしょう。
すべてのことがこれほど単純に進むことはありませんが、このようにして、経営者の意識に強く刻み込まれた質問(内在化された質問)は、次第に社内に広がります。そして、「お客様」に関する質問が社内に増えた分だけ、社員のお客様に対する意識が高まります。これは意識の変化です。意識が変われば行動は変わります。社員ひとりひとりの小さな行動の変化は、最終的には組織全体の変化へとつながっていくのです。これはまさに「経営者へのエグゼクティブ・コーチングを起点とした組織変革」なのです。
経営者に対するエグゼクティブ・コーチングでは、経営者が「新しい視点を得た」「気づきがあった」程度では価値がありません。経営者に新たな質問が内在化されることで、経営者の「行動」が変わり、それによって社員の行動が変わる。これこれこそが、シンクワイアがエグゼクティブ・コーチングで狙っている成果なのです。
組織の変化の起点は経営者にあり、その手段は質問の内在化である。 私達はそう信じています。
経営者にこそ「成長目標」は欠かせない要素
クライアントのほとんどは、常に成果を出し続け、評価され続けてきた経営者。成果目標を立てるのは得意分野でスムーズなのですが、成長目標となると、「えっ、私自身の成長が必要なんですか?」と、途端に言葉に詰まる人もいます。
経営者が変化し、成長し続けることは、組織のさらなる発展に欠かせない要素です。
成長目標なき成果目標は、単なる表面的な行動変化にすぎません。成果目標だけでは、目標を達成したように見えても、行動が継続される可能性は低く、まるで三日坊主のようにいつしか元に戻ってしまうこともあるのです。
これまでの経験では、エグゼクティブ・コーチングがうまくいかない原因の9割は「目標設定」にありました。 本当に手に入れたいと心から願うような目標を、クライアントが自発的に設定できるように対話していく。これはエグゼクティブ・コーチの最も大切な能力の1つなのです。